朝鮮大学校訪問

シンポジウム「関東大震災時の朝鮮人大虐殺と植民地支配責任」の参加のために朝鮮大学校に足を運んだ。なんと43年ぶりの同校訪問になる。学生時代、日朝学生連帯委員会の一員として大会に参加したのだったが、当時の記憶は断片的にしか残っていない。ただキャンパスのたたずまいには見覚えがあり、ある種の懐かしさにしばしとらわれた。

朝大生による演劇をプロローグに5時間にわたるプログラムだったが、登壇者の話はいずれも内容に富むものばかりで、多くのことを学ばされた。とくに慎蒼宇氏の発表は、緻密なデータに裏打ちされた刺激的な分析で、このシンポジウムの白眉といってもよいものだった。関東大震災時の虐殺は偶発的なものではなかったということを、東学党や義兵闘争の弾圧、シベリア出兵、3・1独立闘争弾圧にかかわった師団や将官たちと震災時に派兵されたそれとの重なりを指摘し、植民地弾圧のための「疑わしきは殺せ」の殲滅作戦が、震災時の虐殺に影を落としていることを、詳細なデータをもとに立証していた。自警団を形成した在郷軍人の多くも、同じく植民地への軍事行動での経験を発動させ朝鮮人虐殺を主導していったわけである。

95年前のジェノサイドが単なる歴史的事実ではなく、その背景にあった社会意識が今まさに顕在化しつつあることへの危機感を、どのパネリストも踏まえていたことも、特筆しておきたい。レイシズムヘイトクライムはもちろんのこと、「朝鮮人虐殺はなかった」などの歴史の改竄がすでに一定の効力を発揮してしまっている現状を指摘する声もあった。しっかりした根拠を踏まえつつ、「記憶の人民闘争」に望む覚悟が問われてもいるのだと痛感する。