村山談話

服部龍二『外交ドキュメント 歴史認識』(岩波新書1527)読了。
歴史教科書問題、靖国公式参拝問題、従軍慰安婦問題などのイシューを巡る日中韓の外交の過程を丹念に辿った著作です。村山談話に触れた一節を引用します。

村山談話は対外政策の一環であり、いわば終戦五十周年の外交とも言えよう。内容、長期的な見通し、首相官邸と官僚機構の連携、各国の反応などを勘案するなら、和解政策として完成度の高い談話だった。村山談話は一時しのぎではなく、踏襲されることを見据えることで、長期的な視野に立っていた。

村山談話は、いくつもの内閣を経て、二〇年も継承されてきた。日本政治の共通言語になってきたと言える。村山談話は、対外関係における言葉の重みを政策に生かしたまれな事例であった。

村山談話が、村山富一の個人的な思想信条を吐露したものでなく、実に多くの知性が関わった「知恵」の産物であるのなら、それに、日本国憲法を「みっともない」と言って憚らない独善的なメンタリティーの持ち主がことさらに蛇足めいた言葉をつけたそうとするのは、やはり愚行だと思わざるを得ません。